縦ロールのお嬢様が、手にモーニングスターを提げている。この一枚絵で全部持っていかれた人、けっこういるはず。
アリアーヌはカルドゥウスグリーンの一人
縦ロールにあたくし、そしてモーニングスター
まず立ち位置から。
アリアーヌはノイクローム率いるカルドゥウスの一人で、カルドゥウスグリーン。
縦ロールに一人称のあたくし。お嬢様らしさを漂わせておきながら、その手にはまさかのモーニングスター。
錆びついた大鉈といい、棘を模した鎖といい、カルドゥウスは血生臭い武器を好むのだろうか、と考察サイトに書かれている。この所感、僕もまったく同じことを思った。
丁寧な言葉で吐かれる過激な内容
台詞のギャップも彼女の芯。
丁寧な言葉遣いだが、その内容は過激かつ好戦的。特に人工生命、正確にはオートマタを毛嫌いしていて、彼らを前にした時は辛辣に罵る。
デュエル開始時、オートマタ側のキャラを相手にすると専用の台詞が出る。存在そのものを否定するような言葉。
丁寧語のまま、そこまで言うのか。初めて聞いたとき、画面の前で少し身を引いた。
彼女がオートマタを憎む理由
母のように慕われていた世話役
公式が公開した背景が、そのまま答えになっている。
薄暮の時代、あるところに仲の良い姉妹が父親とともに暮らしていた。姉妹の家に母親はいなかったが、世話役の女性型オートマタが役目を十分に務め、母のように慕われていた。
ここまでは、穏やかな家庭の話。
妹は姉を庇って死んだ
そして。
ある日、オートマタが同時多発的に制御を失い、暴走する事件が発生する。姉妹の世話役のオートマタもまた暴走して一家を襲い、妹は姉を庇って殺されてしまった。
この事件をきっかけに、姉であるアリアーヌの人生は大きく歪んでいくことになる。
母のように慕っていた存在が、妹を奪った。しかも妹は、自分を庇って。
あの罵倒の理由が、これ以上ないほど筋を通している。憎悪の対象と、育ての母が同じ形をしている。
技はHPを見て対象が変わる
敵味方すべてが対象になる
戦闘面での特徴が、また変わっている。
アリアーヌの技は基本的に敵味方すべてが対象。それぞれの技のターゲットは現在のHPによって選択されるので、なるべく自分側に有利になるような技を選ぶ。
自分で狙いを定めるのではなく、盤面のHP状況が対象を決める。
だから彼女を使うときの思考が独特になる。技を撃つ前に、味方と敵、双方の残りHPを確認する。ここが一致していないと、狙った相手に飛ばない。
技の名前も理屈っぽくて好き。ホーラの法則、イルネスの原理、ナーシングの理論、クルーアルの最終定理。看護と学問の語彙が並んでいる。
ダイスを無視できる条件と、その代償
強みと弱みも明確。
条件さえ整えばダイスを無視してダメージを与えることができるが、腕力や防御性能はやや頼りない。
ダイスを無視する。アンライトのカードバトルにおいて、これがどれだけ異質か。
その代わり、殴り合いには弱い。条件を作れるかどうかがすべて、というピーキーな設計になっている。
敵の回復量を計算に入れ忘れた対戦
自分の都合だけで技を選んだ
アリアーヌを使い始めた頃の話。
技の説明は読んだ。HPで対象が決まる、という一行も。読んだうえで、僕は自分のパーティのHPしか見ていなかった。
味方が削れている。よし、こっちに回復が飛ぶはず。そう思って技を選ぶ。
飛ばない。
飛んだ先は、相手側だった。
……え?
対象は盤面全体のHPを見て決まる。相手側に、こちらの誰よりも削れているキャラがいた。それだけの話。
誰のHPを見るべきかに気づく
そのターン、僕は敵を回復させた。
画面を見つめたまま、しばらく手が止まった。指先が冷たい。喉の奥がひゅっと鳴った。
自分で敵を治した……
対戦相手からしたら、ありがたい贈り物でしょ。恥ずかしくて、その日はもう一戦もしなかった。
翌日から、技を選ぶ前に必ず全員のHPを一列に確認する癖をつけた。味方だけじゃなく、相手も。盤面を上から眺める視点が要る。
彼女を使うということは、戦場全体の体力を管理するということ。そこに気づくまで、僕は自分の手札だけを見ていた。
妹ポレットの実装で、姉の技が変わった
断絶という状態異常
後から実装された妹の存在が、姉の性能まで動かした。
ポレットは母親がいない環境で育ったためか、姉のアリアーヌをやや過剰に慕っている。
技にはダメージがランダムに増加する性質を持つものがあり、さらに断絶という新しい状態異常を持つ。断絶状態では、技やステイによってHPを回復することができない。回復技を主力にしているキャラクターに対して非常に有効。
回復を止める妹。回復を配る姉。
姉妹で、真逆の方向を向いている。
ナーシングの理論への追加効果
そして公式の告知に、こんな一文がある。
ポレット実装に伴い、アリアーヌの技であるナーシングの理論に追加効果が付いている。
妹が実装された日に、姉の技が強化された。
ゲームの仕様変更としてはよくある話。でも、この二人の背景を知っていると、ただのバランス調整に見えなくなる。
幸せになりたい、という願いの重さ
趣味が刺繍という設定
妹を失い、幸せになりたいという切実な願いを糧に戦い続ける不幸系お姉さん。趣味が刺繍と穏やかでささやかなところも、物悲しい気持ちにさせるキャラクターである。
刺繍。
モーニングスターを振り回す女が、家に帰って針を持つ。ささやかな手仕事を続けている。
失われた日常を、指先だけで再現しようとしているように見える。
姉妹が同じ盤面に並ぶとき
デッキに二人を並べられる、というのがこのゲームの残酷さでもあり、優しさでもある。
妹を庇われて生き残った姉と、姉を過剰に慕う妹。物語の中では、もう一緒にいられない二人。
それがカードとして、同じパーティに立つ。回復を配る姉の隣で、妹が敵の回復を断つ。
僕がこのゲームでいちばん長く使ったのが、この編成でした。強いから、というより、並べていたかったから。
盤面のHPを一列に眺めながら技を選ぶあの数秒。誰を救って、誰を放っておくのか。アリアーヌというキャラクターは、その判断をプレイヤーに毎ターン突きつけてくる。
コメント